ヴァイスホルン登山とツェルマット周辺ハイキング(2006年夏)

カストゥール登頂(TADA)(2006年7月25日)

カストゥール頂上雪稜

カストゥール頂上雪稜

カストゥールへ向かって

いよいよTADAがカストゥールへ挑戦する日である。5時45分にマッターホルン・グレイシャーパラダイス(旧クライン・マッターホルン)行きのゴンドラ駅に集合しなければいけないので前日と同じく4時30分に起床する。ところが時差ぼけのためか子供たちまで起きてしまい、手がかかったためアパートを出たのは5時28分。遅刻を恐れつつも早歩きで向かう。

朝から晩までにぎわうツェルマットのメインストリートもさすがに人影は無いと言いたいところだが、時差ぼけのためか根性なのかマッターホルンの朝焼けを見ようとする多数の同胞(年配者ばかり)の姿があった。他の国の人の姿は無く、ここが日本に思えてくる。でもメインストリート沿いの見通しの悪いところで待たなくても中心部から少し離れたマッターフィスパの川沿いや川向こうの高台のほうがきれいにみえるのにと思うTADAであった。

5時45分ジャストになんとか到着すると、アルパインセンターのリリーさんが点呼をしている。「妻の名前になっているがきのうと交替した」と言うとOKということで登山ガイドとグループツアーに同行する人に引き合わされる。登山ガイドは名前も聞かなかったし、典型的な登山ガイドで可もなく不可もない感じ。もう一人は年齢不詳の西洋人だが背がすごく高い。足も長い。一緒のスピードで足を動かしたら絶対に勝てない感じ。ポルックスに行く人はマッターホルンのトレーニングが多いので、聞いてみたらトレーニングではなく、マッターホルンにも登ったことはないという。どうもよくわからない人だ。

フーリからトロッケナーシュテーク間のロープウェイからブライトホルンを撮影したが、すでにすでに赤みは消えてしまっていた。残念。

観光客は乗れない時間帯のため、当然人影は無い。
トロッケナーシュテークからさらにロープウェイを乗り継いでクラインマッターホルンに到着した。いよいよ2年ぶりにアルプス登山の再開である。雪面に出てからハーネスやピッケルの準備を済ませて6時45分ごろにガイド、西洋人、私の順にアンザイレンして出発した。

クラインマッターホルンを6時45分頃に出発。夏スキー用の設備がある。

早朝の山はとても静か。

少し下りなので楽チン。雲が少しあるとはいえ、晴れである。すがすがしい空気を吸いながら気持ちよく歩く。途中でポルックスやカストゥールに雲がかかり、心配だったが、途中から晴れてきた。

歩き出して1時間弱で行く手にカストゥールとポルックスが見えてきた。でも頂上に雲がかかっている。

だんだん大きくなってきた。左がポルックスで右がカストゥール

8時37分、左手にポルックスをみながら通過する。

9時30分ごろ、カストゥールに取り付く。稜線に登る前の最後の壁を登る直前、TADAのアイゼンの脱落に気が付いた。ガイドが下のほうを登ってくるパーティにアイゼンが落ちていないか聞いている。ああ恥ずかしい。

せっかく一番乗りしようとしたのに待たされているガイドともう一人のクライアント。ごめんなさい。

しばらくすると下のほうから大声で声が上がった。どうもルート上に残っているのを発見してくれたらしい。親切なその一行が登ってくる間、ルートからそれて休息した。
アイゼンをもってきれくれた人にお礼を言って、なんとか登山を再開できた。ガイドがまず壁を登って確保してくれる。

もう一人のクライアントが登り、いよいよTADAの番だ。

傾斜よりも結構氷が緩んできていておもったよりは大変だった。壁を登り終わると右側にナイフリッジがあり、そこを少し進むとそこがカストゥールの山頂だった。

カストゥールの頂上直前。とてもきれい。TADAは最後の雪稜をいくこの瞬間はとても幸せ。

カストゥール登頂成功

9時52分に登頂。ここは、リスカムやモンテローザへ続く縦走路の途中のようだ。ルートはまだ続いている。
山頂からは西にはブライトホルンからカストゥール、東にはリスカムからモンテローザの高峰群を望むことができた。近くにはたぬがきのう登頂したポルックスも見える。天気もよく、気分も最高であった。ここに来るまで知らなかったのだが、クラインマッターホルンからモンテローザ連峰を縦走するルートは、カストゥール山頂を通っていて、登山者たちの一部はカストゥール山頂で小休止してからリスカム・モンテローザ方面へ向かっていった。

クラインマッターホルン方面を振り返る。右側がポルックス、中央がブライトホルン、ブライトホルンの左側奥にマッターホルンが雲に隠れている。

頂上から少し下ったところで、お茶を飲んでバナナを食べた。

縦走路をモンテローザ、リスカム方面に向かう登山者たちが中央のピークに見える。いいなあ。いつか縦走してみたい。

手前がリスカムで奥がモンテローザのデュフールスピッツェ。ゴルナーグラードからの見慣れた姿とは大分異なる。

頂上から10時12分くらいに下り始める。

どんどん登ってくる。すれ違いは難しいのでしばらく待つ。

稜線から壁を降りる前のところで、カストゥール山頂をもう一度見る。とてもきれい。大変だがこんな風景を見えるからやめられない。

これから戻って行く、クライン・マッターホルン方向を見ると、ブライトホルンが見えた。

クライン・マッターホルンへ戻る

壁を下りました。下りのほうが危ないので慎重に。

あとはひたすら歩いて戻ることになる。ここまではアイゼンを落とすという反省すべき恥ずかしい事件を除けばよかったのだが、この後はよくなかった。
山頂までは体調は良く、山頂直前以外はそれほど息も切れなかったのだが、山頂で軽い頭痛が始まり、帰路の途中の11時過ぎくらいにはかなりひどくなってきた。頭痛だけなら我慢するのだが体も思うように動かない。今思えば時差ぼけや疲れと水分をそれほどとらないための水分不足、トレーニング不足による筋肉の疲労などの複合状態により高山病に近い状態になったと思う。

10時54分ごろ。ポルックスの下を通過。

後ろを振り返ると、自分たちの歩いてきた足跡が広がっていた。
TADAはこの後、登山ガイドともう一人のクライアントのペースについていけなくなってしまった。TADAはモンブラン登頂時に高山病を体験しているがとてもつらくて情けない。モンブランのときは下りで急速に高度を下げることができたが、今回はクラインマッターホルンまで全体としては下りでも、一度かなり下ってから登り返す形になる。ふらふらのため転んだり、クレバスを飛び越えるのに失敗して落ちかけたり、ひどく遅いわでかなりアンザイレンした2人に迷惑をかけてしまった。

12時37分ごろ、振り返るとカストゥール(中央奥右)もポルックス(中央奥左)も遠くなっていた。でもまだたどりつかない。

カストゥールをズームしてみた。こうしてみると結構斜度が急なところを登ったようだ。

ブライトホルンのノーマルルートを降りてくる人たちはいっぱいいる。

合流するあたりから人がいっぱいになる。TADAはふらふら。平らなところでもさっさと歩けない。こんなのではヴァイスホルンは不可能な気がする。

結局クラインマッターホルンのロープウェイ駅に到着したのは13時15分で、登りに3時間かかってこれは標準的だったのだが、岩場でもなんでもない全体としては下りなのに3時間以上という遅さであった。

クライン・マッターホルン駅でガイドと別れてから、もう一人のクライアントと一緒にクライン・マッターホルンの展望台に行ってみた。雲が多くなってきていて眺めはさほどよくもなかったが、登山話に花を咲かせた。

そのクライアントはリヒテンシュタインから来たということであった。アルプスの山をいくつか登っているが、マッターホルンやアイガーには登ったことはないということであった。山行中に足を引っ張ったことをお詫びするとノープロブレムといって許してくれた。今回の登山は、来週から南米アンデスのコトパクシなどに登山に行くのでそのトレーニングとしてきたということであった。

リヒテンシュタインはスイスの隣国であり、実力も十分ありそうなのになんでマッターホルンに登らないのかと聞いたら混みすぎているからということであった。どうもその感覚が良くわからないが、スイスや周辺国の人にとってマッターホルンは富士山のようなもの(富士山よりは高くてかなり難しいが)なのかなと納得した。

リヒテンシュタイン人と一緒にトロッケナーシュテークまでロープウェイで下り、明日にはリヒテンシュタインに帰るのでもう少しトロッケナーシュテークで景色を眺めていくという彼と分かれて、ツェルマットまで下った。ツェルマットまで下ると先ほどまでの体調がうそのように疲れてはいるものの頭痛はふらつきはなくなった。

ツェルマットでは疲れていたので村内バスに乗ってアパートに戻る。時刻は16時近くになっていた。アパートでたぬに結果を報告していろいろと反省したり考えた。

カストゥールに登るのにこんなにひどい状態では、はるかに難易度が高いと思われるヴァイスホルンはできないのではないかと不安が残った。これまで登った山としては、難易度的にはブライトホルンについで易しいと思えた山である。以前、モンブラン、マッターホルン、アイガーに登れたということで自信を深めていたのだが、2年ぶりであることと年をとっているので体が弱くなったのではないかとも感じた。しかし、これまでもモンブラン、マッターホルンのときのモンテローザ、アイガーのときのメンヒなど、ヨーロッパに行って最初にアルプスの高峰に上ろうとすると最後まで元気ではいられず、大概高山病などになってろくでもない登山内容あるいは結果になっている。時差ぼけ、疲れ、実力不足などいろいろ要因はあるのだが、どうもたぬに比べるとTADAは高山病になりやすい体質ではないかと感じてはいる。事実、たぬはばてることはあっても頭痛や高山病になったことはない。今回も水分に対する配慮が足りずに高山病になったと解釈してなんとか自分をなぐさめてヴァイスホルンに挑戦しようと再度決意した。でも、ヴァイスホルンは4500mを超えていて、アイガーはもちろん、マッターホルンよりも高いのだ。不安だなあ。

夕立がやんで16時30分ごろに買い物と天気チェックのためにみんなで外出する。アパートからメインストリートへ出ると、夕立の影響からかいつもより遅めに羊の一行が通り過ぎようとしていた。当然ながらNAOMIはついていきたいと言い出し、教会の向こうのクライン・マッターホルンのゴンドラ駅まで行進につきあうことになった。

こうしたアクシデントもあり、ガイド組合によって、買い物をして帰ると18時近くであった。天気はだんだんよくなり、明後日は快晴になるということ。ポルックス登山でぼろぼろで気合の入らなかったたぬもとにかく頑張るという覚悟を決める。たぬが急いでスパゲティを作り、18時30分ごろからバルコニーで夕食を食べる。外で食べるご飯はおいしい。その後は風呂に入れて子供を寝かせつけ、明日以降の予定を少し考えてすぐに寝るといういつものパターンであった。たぬは登山用具のパッキングをする。アイゼンについては今回TADAが失敗したとはいえ、新規購入した品の方が明らかに着脱しやすく、しっかりと固定できるので新しいほうを使うことにする。

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