マッターホルン・ブライトホルン登山(2003年夏)

モンテローザに届かず(TADA)(2003年7月21日)

モンテローザ登山の途中で

モンテローザ登山の途中で

最終到達地点はこの雪稜の中腹あたり。後方にみえる岩山が頂上と推測される

デュフールスピッツェ目指してモンテローザヒュッテを出発

午前2時前に腕時計の目覚ましで起床する。周りでもごそごそと準備が始まっているが、隣で寝ているガイドのハーヴィは起きようともしない。 食堂に下りていくがどこに座ればよいのかわからない。困った。すると、ガイドのハーヴィが下りてきたので席を教えてもらい(自由席だったようだが)食事となる。固いパンとお茶であまり食欲がわかない。それでも無理に胃に流し込む。頭痛がひどくなってきている。大丈夫かなあ。 出発でも荷物置き場が別の部屋であり、準備に手間取ってしまった。

午前2時40分に出発し、しばらくは岩場が続く。ハーヴィはほとんど迷わなかったが、たまに少し戻ったり、GPSを見たりしている。やはりガイドでもまったく迷わずというわけには行かないのか。 岩場が終わって、オーバープラッテ3109mからアイゼンをつけてアンザイレンして氷河を登っていく。クレバスがすさまじい。暗闇の中で多くのパーティがさ迷っている。クレバスもヒュッテまでのハイキングにあったものに比べて大きさも幅も段違いであり、その上暗くてよく見えない。残念ながら暗くて危険で写真を撮る余裕はなかった。  

すごく大回りをしてようやくクレバス帯を突破した。いつもこんな状態かと思ってガイドに聞くと、今年のクレバスの状況はここ数年来で最悪らしい。そんなにガイドから遅れて足を引っ張ったつもりはないのだが、大分時間をロスした気がする。

写真ではわからないがものすごい強風でたっていられないほどであった。雲もものすごい勢いで流れている。

強風の中を登っていく。天候はいまいちだが、少し晴れてきたのできれい。

無念のモンテローザ敗退と下山中の悪天候

この斜面の中腹でガイドから引き返すことを提案された。理由は強風でこのまま登っていっても頂上に立てる可能性は低いこと。そして昼からは雷雨になり非常に危険であること。午後になるとクレバスが緩んで危険であることであった。命令ではなかったがすでにTADAはばてばてであり、たとえ登れても天候悪化して雷雨の中をクレバス帯を通って帰るのは危ないのは理解できたので引き返すことにした。 7時30分に戻り始め、頂上までは1時間30分くらいのところということであった。あとで写真を見るとこの斜面を登ると頂上が見えたのに、、残念。

下り始めてもスピードは緩まない。ハーヴィはすごい勢いで下りていく。

天候はどんどん悪化して、空は黒い雲に覆われてきた。この後、下りはじめて1時間位してから登っていく何組ものパーティとすれ違う。彼らは午前2時(われわれより40分も早い!)にヒュッテを出たそうだ。ガイドがどこにいたのかと聞くとクレバス帯で迷っていたらしい。それでも彼らは登っていく。天候や時間を考えると危険な行動のような気がするが、ある意味ではうらやましい。

明るくなってからのクレバス帯の通過でもすごかった。この写真では迫力が伝わらないがそこでは写真を撮る余裕などまったくないので仕方がない。

この写真をとった直後から雹が降ってきた。風速20メートルぐらいの強風と日本では見られない大きさの氷の塊が降ってくる。危険なので頭を抱えて岩の影でうずくまって10分ぐらい避難した。

少し風も収まり、雹も雨に変わったので出発する。戻ってきてよかった。山頂近くの厳しいところであんな目にあったらと思うとぞっとする。 後日、ツェルマットで聞いた情報だと、この日、落雷で2人の死者が出たらしい。

モンテローザヒュッテに到着した。小屋に到着後、ガイドのハーヴィとスープを飲んで別れる。熱いスープは極めておいしかった。

登頂できなかった上に、ぼろぼろの体であと2時間30分もローデンボーデン駅まで歩かねばいけないとは気が重い。

今回の山行では氷河とクレバスの恐ろしさをしみじみと味わった。天候に恵まれたモンブランやメールドグラスの体験トレーニングぐらいでは味わえなかったものだ。

雲が下りてきて山の上のほうはまったく見えない。

氷河上に下りると一瞬、青空が見えた。だが、すぐに黒い雲が急速に広がりサンダーストームが始まった。土砂降りの雨と強風と雷である。氷河上でピッケルを持って動くのは危険極まりないと判断し、装備をおいてかなりはなれたところまで逃げて、頭を抱えて30分くらいうずくまっていた。 雨具は上半身はつけていたが下半身はつける余裕がないほど急速に天候が悪化したので、ズボンがびしょぬれになってしまった。教訓:日本の夏山とは違うのだからどんな天候の急変にも対応できるようにかっぱではなく、高山用のスボンを着用すべき。

上の写真から2時間20分かかってローデンボーデン駅に到着した。モンテローザ・ヒュッテからは3時間20分かかった。写真は撮る気もうせる状態であった。 宿で一緒だったもう一組のガイド登山者はこの駅に着く前にガイド・登山者ともにTADAを追い抜かしていったが、登頂できたようだ。体調不良や時差ぼけなどの言い訳はあるが、鉄人28号みたいなクライアントであり、山頂まで登ったので3時間近いハンディがあっても抜かされたことを考えると残念ながら鍛錬が足りないと認めざるを得ない。よりがっくりきた。

誰もいない駅前。いつもはリッフェルゼーへ行く人やハイキング客でいっぱいだが。

同じく誰もいない駅。

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